芸術家外伝

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Rococo

支配層・労働者

1850年前後にオレノ・ドーミエ、ジャン=フランソワ・ミレー、ギュスターヴ・クールベの写実主義絵画を代表する三人の画家が相次いで誕生した。

話し合う三人の弁護士

ドーミエは世紀前半の風刺版画家としての長いキャリアから身に付けたカリカチュア風の大胆な省略法によって、社会の支配層であった法曹界の人々を描いた『話し合う三人の弁護士』のような作品や、『Laveuse au Quai d'Anjou』のような名もない庶民たちを描いた。

Laveuse au Quai d'Anjou

これは写実主義の始まりが次第に反動化する七月王政や強大化するブルジョワ支配への不満がテーマの面で画家たちの目を社会の現実に向けさせたことに由来しているためである。そのため、いままであまり描かれることのなかった、驕り高ぶった支配層の戯画や農民や労働者の姿が多く描かれるようになったのである。

羊飼いの少女

ミレーは労働する農民の堂々とした姿を、聖書や古代文学に語られる人間の労働の根源的な意味と重ね合わせつつ描いている。最も有名な作品は『落穂拾い』であるが、今回はそれよりも私が好きな『羊飼いの少女』を御覧いただきたい。まるで消失点に吸い込まれそうな錯覚を覚える素敵な作品である。

画家のアトリエ

クールベは社会主義思想に共感を抱いて労働者や農民を描くことから出発し、1855年の万博の時に私費で個展を開き、『画家のアトリエ』を展示して戦闘的に写実主義を世に問うた。

当時の前衛であったこうした写実主義の流れから世紀後半に印象主義が生まれることになるのである。